暗い売り場に「ショップ感」を出す|豊川稲荷・西元美術館の内装改修

改修後のミュージアムショップ「しろくろ」の全景 店舗・施設の空間づくり

「商品を置く棚が足りない」「なんとなく暗くて、お店なのかどうか分からない」——物販スペースを持っている施設の方から、こういうご相談をいただくことがあります。

今回は豊川稲荷にある西元美術館さんの1F ミュージアムショップの改修工事をさせていただきました。実は僕にとって初めて手がけた建築物でもあります^^

改修後のミュージアムショップ「しろくろ」の全景
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なぜ「ショップ感」が出ないのか

改修前のショップは、こんな状態でした。

  • 商品を並べる棚がなく、そもそも展示できるスペースが少ない
  • 全体的に暗く、ショップとして分かりにくい雰囲気

ここが大事なところなのですが、「暗い」と「お店に見えない」はセットで起きます。

人は明るいところに自然と目が行きます。売り場が暗いと、そこに商品があること自体に気づいてもらえない。すると足も止まらないし、手にも取ってもらえない。棚が足りないから商品を出せない、商品が少ないからますます売り場に見えない、という悪循環になっていました。

しかも西元美術館さんは、美術館の作品グッズだけでなく、お酒や工芸品、お茶など、美術館のコンセプトに合ったものも扱いたいというご要望がありました。扱う点数が増えるなら、なおさら「置ける場所」が要ります。

考えられる選択肢

売り場が暗くて棚が足りない、というとき、だいたい次の3つの方向があります。

1. 置き型の什器を買って並べる

いちばん手軽で、費用も抑えられます。ただ、既製品の什器はどうしても「どこかで見たことのある売り場」になりがちです。美術館の世界観を大事にしたい場所には、少しもったいない。

2. 照明だけ足す

スポットライトを増やせば明るくはなります。でも今回のようにそもそも置く場所がない場合、明るくなった空間に商品がまばらに並ぶだけで、寂しさがかえって目立ってしまうことがあります。

3. 壁面ごと造作して、照明と一緒につくる

費用と工期はいちばんかかります。その代わり、「置ける量」と「見え方」を同時に解決できるのが強みです。

今回はこう提案しました

今回は3番目、壁面をまるごと造作棚にして、そこに間接照明を仕込むという方向でご提案しました。

理由は、扱う商品を増やしたいというご要望があったからです。1や2では「置ける量」が増えません。せっかくお酒や工芸品まで扱うのなら、その受け皿を先につくっておくべきだと考えました。

白い壁に墨で描かれた筆跡と、壁面いっぱいの造作棚

棚は壁の面いっぱいに設けて、それぞれの段にLEDテープライトを仕込んでいます。上からスポットで照らすのではなく、棚そのものが光るようにしました。こうすると影が落ちにくく、商品が浮かび上がって見えます。

そしてもうひとつ。壁紙には墨をのせられるものを選びました。

ここが今回いちばんこだわったところです。白い壁と造作棚だけだと、きれいではあるけれど、どこの美術館でも成立してしまう。西元先生ご本人に、その場で筆を入れていただいたんです。

白い壁に、黒い墨。この空間の名前が「しろくろ」なので、まさに名前そのものが壁になっています。既製品では絶対に出せない、この場所だけの空間になりました。魂がこもるとは、こういうことなんだと思います。

素材と施工の様子

今回使った主な素材はこのあたりです。

  • 墨をのせられる壁紙— 西元先生の筆入れのため
  • LEDテープライト— 棚の間接照明
  • ダイノックシート— 什器まわりの仕上げ
  • ストリングカーテン— 空間の仕切り
ストリングカーテンでゆるやかに仕切ったミュージアムショップの全景

ストリングカーテンは、入口まわりをゆるやかに仕切るために入れました。壁で閉じてしまうと圧迫感が出るし、何もないと空間がぼやける。糸なら視線は通しつつ、「ここからがショップですよ」という切り替えがつくれます。

「しろくろ」の筆文字が入ったぼんぼり型のサイン照明

そしてショップのシンボルになっているのが、このぼんぼり型のサイン。「しろくろ」の筆文字と「Museum Shop SHIRO + KURO」を入れています。和紙の丸い明かりは、お寺のある場所の空気にもよく合うんですよね♫

正面から見た「Museum Shop SHIRO + KURO」のぼんぼりサイン

仕上がりと変化

間接照明で明るくなった壁面什器とショップ全体の様子

棚が壁面いっぱいにできたことで、展示できる商品の数が大きく増えました。間接照明のおかげで、以前の「暗くてよく分からない場所」から、ちゃんと美術館の中のショップとして成立する空間になったと思います。

中央のアイランドディスプレイと、間接照明を仕込んだ壁面什器

中央にはアイランド型のディスプレイを置いて、手に取ってもらいたいものを並べられるようにしました。壁面で「見せる」、中央で「触ってもらう」。役割を分けています。

この仕事は、たくさんの仲間に協力してもらって完成しました。初めての建築物ということもあって、正直わからないことだらけでしたが、本当に素敵な作品になったと思っています。関わってくださった皆さん、ありがとうございました!

同じことで悩んでいる方へ

売り場が暗い、棚が足りない、という場合の判断の目安をまとめておきます。

  • 商品の点数を増やす予定があるなら、造作を検討する価値があります。置き什器や照明だけでは「置ける量」が増えません
  • 照明は「上から照らす」より「棚を光らせる」方が、商品がきれいに見えることが多いです
  • その場所らしさは、最後のひと手間で決まります。今回でいえば壁の墨がそれでした。既製品で揃えると、どうしても「どこかで見た売り場」になります

逆に、まずは小さく始めたいという場合は、置き什器+スポット照明で様子を見るのもぜんぜんアリです。大事なのはこれから何をどれだけ売りたいのかで、そこが決まると打つ手も決まります。

そのあたりの見極めからご相談いただければ、一緒に考えます^^

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